師匠シリーズ

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【師匠シリーズ】005 桜雨 前編

大学一回生の冬だった。駅の構内で甘栗を売るバイトをしていた俺は、鼻唄をうたいながら割れ栗を見つけては廃棄廃棄と呟きつつしゃがんで口に放り込む、ということを繰り返していた。
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【師匠シリーズ】004 信号機

夜だった。サークルの後輩の家で酒を飲み、深夜一時を回ったころに「じゃあな」と自転車に跨って一人家路についた。
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【師匠シリーズ】002 剣道の話

大学一回生の秋だった。旅行の打ち上げと称して四人の仲間で集まり、カラオケに行ったことがあった。俺の田舎での恐ろしい体験を共に乗り越えた仲間だ。
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【師匠シリーズ】001 田舎 中編(未投下分)

「あれは地震じゃないな。家が揺れたんだよ」先生の家を半ば追い出されて、庭先にとめていた車に乗り込む。「犬神という言葉に明らかに反応していた」こいつは、なんとしても探し出さないとな。
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【師匠シリーズ】124 雲 後編

外は雨だ。額に、顔に、大粒の雫がかかる。雨脚はさほど強くないが、空を見上げようとしても、なかなか目を開けられない。それ以前に、真っ暗な空にはどれほど目を凝らそうとも何も見えなかった。
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【師匠シリーズ】123 雲 前編

大学二回生の夏だった。ある時期、加奈子さんという僕のオカルト道の師匠が、空を見上げながらぼんやりとしていることが多くなった。
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【師匠シリーズ】122 月と地球

小高い丘のなだらかに続く斜面に、藪が途切れている場所があった。下草の匂いが濃密な夜の空気と混ざりあい、鼻腔を満たしている。その匂いの中に、自分の身体から発散させる化学物質の香りが数滴、嗅ぎ分けられた。
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【師匠シリーズ】121 心霊写真5

市内に戻って来ると、もう夕方の五時を過ぎていた。陽も翳ってきている。「二手に分かれよう」師匠はそう言って、街なかで僕を車から下ろした。
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【師匠シリーズ】120 死滅回遊

大学二回生の春のことだった。僕はオカルト道の師匠から頼まれて、現像された写真を受け取りに行った。店舗にではない。普通のマンションの一室にだ。表札もないその部屋のドアをノックすると、しばらくして中から返答があった。
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【師匠シリーズ】119 心霊写真4

「じゃあ、わしはこれで。でも、加奈ちゃん、頼むよ。ほどほどでね」住職が襖を開けて出て行こうとする。電球の明かりに、脂ぎったハゲ頭がやけに照り返している。夏雄とアキちゃんの父、黒谷正月(しょうげつ)は名前のとおり正月が誕生日という生まれついてのおめでたい男だった。