師匠シリーズ

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【師匠シリーズ】024 馬霊刀 1/4

『服部調査事務所』と書かれたドアに背を向けて、狭い階段を下りていく。 目の前で師匠の頭が揺れている。少し猫背で、ポケットに手を入れ、愉快なことなどなにもない、という足取り。
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【師匠シリーズ】022 誕生日

その教師は私立の中学校で数学を教えていた。その年は、1年生のうちA組からF組の6クラスを担当していた。1クラスが40人ずつだったので、240人を担当していることになる。テストの時期には採点で腕が腱鞘炎になりそうだった。
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【師匠シリーズ】023 見えない男

1回の秋だった。「黒い手」の一件以来、ときどき覗いていた都市伝説などを語るサイト『ピーチロア』で、突発オフ会の参加者を募っているのを発見した。中高生が多く、大学生の自分には少々居心地が悪かった覚えがあるが、あまりに暇だったので行ってみることにした。
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【師匠シリーズ】021 握手 中編

それから数日、僕は大学の新入生としての日々を緊張気味に送りながら、ずっと考えていた。キャンパスの妖精などというふざけたあだ名で呼ばれる、あの女性のことを。その彼女が見ているもののことを。
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【師匠シリーズ】019 幽霊物件

大学2回生の春だった。僕はバイト先の興信所である小川調査事務所のデスクに腰掛けて、所長ととりとめもない話をしていた。「鮭のムニエルならいいんですよ。鮭のムニエルなら」「いや、他のムニエルも駄目ってわけじゃないよ」
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【師匠シリーズ】018 失 踪

師匠との話をこれから語っていくつもりだけれど、一晩で語り尽くせるものではない。長く、とても長くなるだろう。だから、先に一連の出来事の1つの結果である、師匠の失踪について書いておきたい。
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【師匠シリーズ】017 館 下

私は来た道をたどり、中央館へ戻った。そして暖炉の部屋に入ると、京子たち4人はまださっきのボードゲームに興じていた。「あら、おかえりなさい」
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【師匠シリーズ】016 館 上

潮騒を聞いている。暗い海がその向こうにある。空には一面の星。水面にはその欠片が揺れている。
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【師匠シリーズ】015 赤

大学1回生の秋だった。土曜日だったので、俺は家で昼間からネットに繋いでいろいろ覗いていた。やがていつものオカルトフォーラムに入り込み、同じように暇をしているメンバーたちと雑談を交わす。
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【師匠シリーズ】020 握手 前編

大学1回生の春だった。入学して2週間が経ち、戸惑うばかりだった大学生としての生活サイクルにもようやく慣れる兆しが見え始めたころ。