師匠シリーズ 【師匠シリーズ】035 ホテル 大学2回生の春だった。「幽霊がでるホテルがあるらしいぞ」 京介さんからそう誘われたとき、なんとも言えない違和感があった。「行ってみるか」 2025.02.18 師匠シリーズ
師匠シリーズ 【師匠シリーズ】034 双子 4/4 6月28日、日曜日の朝だった。 夜明け前に目を覚ました僕は、隣の師匠の部屋につっかえ棒が下りたままなのを確認してから、足音を忍ばせて階段を下りた。1階では、女将がもう朝の食事の支度をしていた。 2025.02.18 師匠シリーズ
師匠シリーズ 【師匠シリーズ】033 双子 3/4 僕は師匠に頭を踏まれて目を覚ました。 あれ? 寝過ごした? 慌てて起き上がると、部屋の時計は7時を指していた。「まだ7時じゃないですか」 2025.02.18 師匠シリーズ
師匠シリーズ 【師匠シリーズ】032 双子 2/4 6月26日は金曜日だった。その日の朝、僕は師匠の運転するボロ軽四で、北へ向かう旅路にあった。県北の笹川町に向かっているのだ。僕らの住むO市は、瀬戸内海に近い南側にあったから、県北の町までは結構な距離がある。 2025.02.18 師匠シリーズ
師匠シリーズ 【師匠シリーズ】031 双子 1/4 大学2回生の夏の初めだった。6月も半ばになり、道往く人々の服も軽くなってきた季節。梅雨入りして、むしむしする日が続いていた。 その日僕は、寝不足でしょぼしょぼする目を擦りながら、バイト先の興信所、小川調査事務所の机に座って書類整理をしていた。 2025.02.18 師匠シリーズ
師匠シリーズ 【師匠シリーズ】030 双子 0/4 「にい、さん、しい、ごお、ろく、しち、はち、きゅう、よんじゅう、いち、にい……」 机の上に置いた目覚まし時計の秒針の動きを、オカルト道の師匠、加奈子さんが数えている。僕はその様子をじっと見守っている。 2025.02.18 師匠シリーズ
師匠シリーズ 【師匠シリーズ】029 猫 大学3回生の春だった。 正確に言うと、2回生が終わり、3回生の最初の授業を迎える前の、短い春休み中のことだ。 そのころ俺のオカルト道の師匠は、知らない間に我が大学の司書の職にありつき、「もう僕の教えることはない」などと言いながら、この春に大学院を卒業していた。 2025.02.18 師匠シリーズ
師匠シリーズ 【師匠シリーズ】026 馬霊刀 3/4 鳥井家の敷地を出たあと、師匠は興奮気味に言った。「おい。あのじじい、なにか知ってるぞ。大当たりだ。イヌジニンの昔の『仕事』がそんなにセンシティブなら、教えてくれた宮内先生が警告したはずだ。それがあんな過敏な反応をするってことは、なにか、それがセンシティブになる事情が、あのじじいの側にあったってことだ」 2025.02.18 師匠シリーズ
師匠シリーズ 【師匠シリーズ】025 馬霊刀 2/4 それから1週間ほどは、なにごともなかった。 小川調査事務所の師匠を名指しした依頼は、特になかったので、そのあいだ僕らは事務所のバイトから離れていた。師匠とは2回ほど一緒に飯を食べたが、その『弓使い』に関わる話はしなかった。訊こうとしたが、「捜査中」と言って教えてくれなかったのだ。 2025.02.18 師匠シリーズ