師匠シリーズ

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【師匠シリーズ】68 引き出し

大学三回生の夏だった。早々にその年の大学における全講義不受講を決めてしまった俺は、バイトのない日には暇を持て余していた。特に意味もなく広辞苑を一ページ目から半分くらいまで読破してしまったほどだ。全部をやりとげないあたりがまた俺らしい。
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【師匠シリーズ】67 ビデオ 後編

ワケあり物件を横流ししてくれる悪徳坊主から5万で買い取った「やばいビデオ」。そこには列車に飛び込むコートを着た人物が映っていた。これは投身自殺の瞬間を写したビデオなのだろうか。
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【師匠シリーズ】66 ビデオ 中編

次の日、昼過ぎに目覚めた俺は師匠の家に電話をした。十回ほどコール音を聞いたあと、受話器を置く。続けて携帯に掛けるが、電源が切れているか、電波が届かない場所にいるらしいことしか分からなかった。
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【師匠シリーズ】65 ビデオ 前編

大学二回生の初夏だった。俺はオカルト道の師匠につれられて、山に向かっていた。
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【師匠シリーズ】64 怪物 幕のあとで

疲れ果て、最後の気力を振り絞って自転車を漕いでいた私は、家まであと少しという場所まで来ていた。すべてが終わったという安心感と、なにもできなかったという無力感で、力が抜けそうになる足を叱咤してどうにか前に進んでいた。
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【師匠シリーズ】63 怪物 「結」下

暗い。暗い気分。泥の底に沈んでいく感じ。私は、やけに暗い部屋に一人でいる。散らかった壁際に、じっと座ってなにかを待っている。
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【師匠シリーズ】62 怪物 「結」上

その日の放課後、私は3年生の教室へ向かった。ポルターガイスト現象の本を貸してくれた先輩に会うためだ。廊下で名前を出して聞いてみるとすぐに教室は分かった。
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【師匠シリーズ】61 怪物 「転」

図書館からの帰り道、私はクレープを買い食いしながら商店街の路地に佇んでいた。夕焼けがレンガの舗装道を染めて、様々なかたちの影を映し出してる。道行く人の横顔はどこか落ち着かないように見える。
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【師匠シリーズ】60 怪物 「承」

怖い夢を見ていた気がする。朝の光がやけに騒々しく感じる。天井を見上げながら、両手を頭の上に挙げて伸びをする。自分が嫌な汗を掻いていることに気づく。
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【師匠シリーズ】59 三人目の大人

小学校2年生の教室で、図工の時間に『あなたの家族を描いてね』という課題が出た。みんなお喋りをしながら色鉛筆で画用紙いっぱいに絵を描いた。原っぱにお父さんとお母さんと女の子がニコニコ笑いながら並んでいる絵。