師匠シリーズ 【師匠シリーズ】98 未 本編4 それから僕らは二人で温泉旅館『田中屋』を皮切りに、その近くにあった他の温泉をいくつかハシゴした。どの温泉も入浴のみの客でもOKだった。入浴料を払って汗を流し、新しい服に着替えてから旅館の人をつかまえてそれとなく『とかの』の噂を訊き込んだ。 2025.02.16 師匠シリーズ
師匠シリーズ 【師匠シリーズ】97 未 本編3 目が覚めたのは朝の九時過ぎだった。まだ頭が重く、肌触りの良い布団から出るのは億劫だったがなんとか気合を入れて起き上がった。三時間ほど寝ていたらしい。 2025.02.16 師匠シリーズ
師匠シリーズ 【師匠シリーズ】96 未 本編2 『とかの』に帰り着いたとき、腕時計を見ると午後四時半を回っていた。旅館の玄関から中へ向かって楓が「ただいま」と声を張り上げる。少しして女将がフロントの奥から姿を表した。 2025.02.16 師匠シリーズ
師匠シリーズ 【師匠シリーズ】95 M.C.D. 大学一回生の夏だった。午前中の講義が終わり、大学構内の喫茶店の前を通りがかった時、僕のオカルト道の師匠が一人でテーブル席に陣取り、なにやら難しい顔をしているのが目に入った。 2025.02.16 師匠シリーズ
師匠シリーズ 【師匠シリーズ】94 未 本編1 大学一回生の冬。僕は北へ向かう電車に乗っていた。十二月二十四日。クリスマスイブのことだ。零細興信所である小川調査事務所に持ち込まれた奇妙な依頼を引き受けるために、バイトの加奈子さんとその助手の僕という、つましい身分の二人で、いつになく遠出をすることになったのだ。 2025.02.16 師匠シリーズ
師匠シリーズ 【師匠シリーズ】93 食べる 一度どうして蜘蛛が嫌いなのか訊いたことがある。加奈子さんはどうしても訊きたいのかともったいぶったあと、いや、後悔するぞとも言っていたような気がするが、ともかくあぐらをかいて語り始めた。 2025.02.16 師匠シリーズ
師匠シリーズ 【師匠シリーズ】92 花 大学二回生の春だった。その日は土曜の朝から友人の家に集まり、学生らしく麻雀を打っていた。最初は調子の良かった俺も、ノーマークだった男に国士無双の直撃を受けたあたりから雲行きが怪しくなり、半チャンを重ねるたびにズブズブと沈んでいった。 2025.02.15 師匠シリーズ
師匠シリーズ 【師匠シリーズ】91 星を見る少女 大学一回生の春だった。そのころ僕は、以前から興味があった幽霊などのオカルト話に関して、独特の、そして強烈な個性をまき散らしていた、サークルの先輩に心酔しつつあった。 2025.02.15 師匠シリーズ
師匠シリーズ 【師匠シリーズ】89 目覚め 大学一回生の冬だった。そのころアパートで一人暮らしをしていた俺は、寝る時に豆電球だけを点けるようにしていた。実家にいたころは豆電球も点けないことが多かったが、アパートでは一つだけあるベランダに面した窓に厚手のカーテンをしていて、夜はいつもそれを隙間なく締め切っていた。 2025.02.15 師匠シリーズ