師匠シリーズ

師匠シリーズ

【師匠シリーズ】109 保育園 中編

「方法はともかく、誰がやったかということです。この中に犯人を知っている、という人は?」反応がない。あたりまえか。「では、まず考えるべきは部外者でしょう。
師匠シリーズ

【師匠シリーズ】108 保育園 前編

土曜日の昼ひなか、僕は繁華街の一角にある公衆電話ボックスの扉を開け、中に入った。中折れ式のドアが閉まる時の、皮膚で感じる気圧の変化。それと同時に雑踏のざわざわとした喧騒がふいに遮断され、強制的にどこか孤独な気分にさせられる。一人でいることの、そこはかとない不安。
師匠シリーズ

【師匠シリーズ】106 風の行方 前編

大学二回生の夏。風の強い日のことだった。家にいる時から窓ガラスがしきりにガタガタと揺れていて、嵐にでもなるのかと何度も外を見たが、空は晴れていた。変な天気だな。そう思いながら過ごしていると、加奈子さんという大学の先輩に電話で呼び出された。
師匠シリーズ

【師匠シリーズ】107 風の行方 後編

それから僕らは、師匠の感じ取る風の向かう先を追い続けた。それは本当の意味で、目に見えない迷路だった。「あっち」「こっち」と師匠が指さす先にひたすら自転車のハンドルを向け続けたが、駅前の大通りを通ったかと思うと、急に繁華街を外れて住宅街の中をぐるぐると回り続けたりした。
師匠シリーズ

【師匠シリーズ】105 ペットの話

高校一年生の春。私は女子高に入ってからできた友だちを、自分の家に招待した。ヨーコという名前で、言動がとても騒がしく、いつもその相手をしているだけでなんだか忙しい気持ちになるような子だ。
師匠シリーズ

【師匠シリーズ】103 トランプ 前編

大学一回生の冬だった。その日僕は朝から小川調査事務所という興信所でバイトをしていた。
師匠シリーズ

【師匠シリーズ】102 巨人の研究  後編

「さあ、行こう」その言葉に背中を叩かれ、発進する。大学病院まではお互い無言だった。僕は何かを考えていたような気もするし、何も考えていなかったような気もする。大学病院の駐輪場に到着し、弾むように後ろから降りた師匠に目で問いかける。
師匠シリーズ

【師匠シリーズ】101 巨人の研究  中編

次の次の日、僕は昼前に師匠の家に行った。月曜日だった。すでに身支度をしていた師匠はすぐに表へ出て来て、「自転車で行こう」と言う。そして僕の自転車の前カゴに荷物を放り込むと、自分は後輪の軸の所に足をかけた。僕の肩に乗った手のひらから一瞬、体温が移る。
師匠シリーズ

【師匠シリーズ】100 巨人の研究  前編

大学二回生の夏。ある寝苦しい夜に、所属していたサークルの部室で数人の仲間が集まり、夜通しどうでもいいような話をしてだらだらと過ごしていた。
師匠シリーズ

【師匠シリーズ】99 未 本編5

「高橋永熾は軍事的侵攻のさいに、以前の領土で信仰していた八幡神社をこの地にも勧請してきます。これは他の戦国武将にも往々にしてあったことです。