【洒落怖廃れた・・・】とんでもない廃屋

人怖
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小4のときの話。
たぶんみんな経験があると思うけれど、小さい頃って「廃屋」があるって聞いただけで冒険心が疼いて仕方ないと思うんだ。

241 本当にあった怖い名無し sage 2013/10/14(月) 01:17:13.90 ID:AorKY0kW0

小4のときの話。
たぶんみんな経験があると思うけれど、小さい頃って「廃屋」があるって聞いただけで冒険心が疼いて仕方ないと思うんだ。
俺自身もあの日は家からそう遠くない場所にまだ探検してない「とんでもない廃屋」があるって聞いて、狂ったように喜んだのを憶えてる。
狂ったようにって書くと大げさだと思われるのは分かってるけど、その日付が問題で、
「夏休み前日」。
ただでさえテンション上がりまくってるときにそんな話題を聞いたから、普段そんなに
親しくない友達まで呼んで、その日のうちに廃屋へ突撃って事になったんだ。

まさかあの日の事で27歳になった今でも廃屋に近づく事もできない
「廃屋恐怖症」になるなんて、当時の自分に言っても絶対に信じて貰えないと思うよ。
あの日は思ったよりも友人たちが集まるのが遅く、全員(8人くらい)集まったのは空がオレンジ色に染まりだした頃。
廃屋に案内してくれる友達を先頭に、俺、そのほかの友達といった具合に、お互いのリュックを引っ張り合って
兵隊アリみたいにゾロゾロ並んで目的地に向かったんだ。キャッキャ言いながらそんなに遠くない廃屋へついたのは良かったんだけど、
思ってたのとはどうも違う。

なんと言えばいいのか、俺が求めていた廃屋は「一階からから二階まで天井は腐りきり、幽霊は常備しております!」
みたいな、いかにも何か出そうな雰囲気の場所だったんだ。
でも実際は、場所は住宅街にある森の中、家のデザインも四角形(ちょうどスネ夫の家みたいな)、
ぱっと見た感じ小奇麗で「ホントに廃屋?」って感じの場所で正直、教えてくれた友達には悪いがとても興味をそそられる様な物ではなかった。
でもせっかくここまで来たんだから、結局探検する事になったんだよね。
まずは一階からということで勝手口から侵入、中を見渡すとおかしなものが沢山ある。
ビーカー、シャーレ、顕微鏡、どれも理科室で見たようなものばかりでとてもじゃないが普通の家とは思えない。
でも何故かそれ以上に興味を引かれたのは沢山の棚に収められた本の数々だったんだ。家は広く、壁一面に本棚があって
そこにはびっちり本や書類が詰まっていて、床にも書類が散らばってて先客がいた事を思わせた。
その事を話すと、犯人はこの廃屋を教えてくれた友達だったんだ。そこで友達が腕組みしながら、今日はなんで「とんでもない廃屋」なんて言ったと思う?
と聞いてくるので正直分からないと答えると指を本棚へ向け、その本を開いてみろと言う。

言われたとおり本を手にとり開いてみた瞬間、そこにいた全員が「っ!?」と声にならない声を上げた。
本の中身は、皮を剥がれた男の死体の写真。
そこにいた全員が息を呑む、本を開けと言った友達さえも。
だが次の瞬間にはある考えがうかんだんだ。
「この家ってお医者さんの家じゃない?」そう俺が言うとみんなまだ完全には立ち直れていないものの、
なるほどねと納得していたようで友達が写真を眺めている間、俺はほかの部屋を探索することにした。
キッチン、リビング、風呂、トイレ、見て回って分かったことが一つ、
この家に住んでいた人はとても知的で素敵な人だろうと言う事。

この状況で、なぜそんな事が言えるのかといえば家のセンス、その一言に尽きると思う。
外見は普通だったが内装、家具が違う、子供の自分に何が分かると思われるかもしれないけれどその短い人生しか歩んできていない
子供でさえも理解できるほどすべてが美しかった。そうなるとさっきの写真も意味が違う、部屋いっぱいの本、ファイル、実験器具、
きっと必死に医学を学び人を救う事に尽力していた、そう思わせるものっだったと思う。友達は何の根拠もなく「頭のおかしい医者が住んでいたんだ!」
などと周りの友達に演説していたがそんなことはこの家全体を見ていってほしい、素直にそう思っていた。

後から考えれば「家全体をみていってほしい」という思いはこの時友達ではなく自分に向けるべきだったと思う。
友達も写真やファイルを見ることに飽きてきたらしく、そろそろ暗くなるし早めに探索を終わらせて明日また来ようという事に。
だが、みんなと探索をしているとおかしな事に気づいた、一人の探索では家具や内装などのデザインばかりに気をとられ意識していなかったが
普通は在りえない違和感、

二階への階段が無い。
小さな脳みそを働かせ出た結論、外側を見て回った。きっと外から上がるタイプだ。
・・・・・・無い、外にも内にも。
いっとき家の中を探すと二階への通路自体は見つかったんだけれど、それが余計に不安と好奇心を煽ってしまう結果になる。
二階への階段は取り外され、階段が本来通るはずの場所は鉄板で塞がれていた。
それが分かった瞬間、門限という言葉は俺達の頭から消えていたと思う。

とにかく二階が見たい!そう思い始めたら妄想が止まらなくなってしまって、
「絶対やばいって、本物の死体とかあるかも!」
「やっぱ頭のおかしい医者がやばい研究してたんだって!」
みんな口々に自分の妄想を吐き出し始めて、最終的には自分たちで作っていた縄梯子で
二階に上ろうという事になった。外側から上がるためまずは家の周りを偵察、登りやすそうなパイプを見つけた。
一番は木登りが得意な俺が雨樋のパイプを伝い、上へ。
思っていたよりずっと簡単に登れたんだけれど気になることがあった、二階の窓から中が一切見えなかったんだ。
窓を良く見ると新聞や雑誌がマジックで黒塗りにして何重にも貼り付けてあり、
一筋の光さえ通したくない
そんな意思を感じさせる気がして、みんなが登って来れる様、梯子を架けてあげたが、
全員が登りきるまでの間どうしてもその事が気にかかっていた。
屋根に登り切りいよいよ二階の部屋に乗り込むことになったが、窓の事を話すとみんな不安になったらしく多数決を取ることに。

「中に入ってみたい奴」「このまま帰りたい奴」結果、好奇心が勝る。
俺が先頭に立ち窓に手をかけると、あぁ、開いた。正直言うと嬉しさ半分、後悔半分、もう往くしかない。
覚悟を決めて窓を開けると満面の笑みで微笑む水着の女がいた、ポスターの。
「心臓が止まった・・・」溜息をつく俺を見て爆笑する友達、大笑いするみんなに腹は立ったがそれ以上に気持ちが軽くなっていて怒る気はしない。
・・・・・ただ気になったことが一つ、何でポスターの口にルージュが引いてあるんだ?
疑問はあったがそのまま窓を跨ぎ二階へ足を踏み入れた、廊下は暗く湿っている。
当たり前だ、入ってあらためて見渡すと日の光が射せそうな場所が一切無い。
隙間はすべて黒塗りの新聞や雑誌で覆われていてどんな晴天でもこの部屋に光を入れることはできない。
さっきまではこの家に住んでいた人間は、知的でセンスのあるそんな人だと思っていた。
だが今となっては友達の言葉が頭の中でこだまのように響く。
「頭のおかしい医者が住んでいたんだ!」
「絶対やばいって、本物の死体とかあるかも!」

帰りたい、今すぐに。それなのに好奇心が俺達の足を進め進めと突っついてくる。
ゆっくりゆっくり前へ進むと一歩足を進める度に、この部屋の住人の異常性が伝わってきた。
廊下の奥に進むほど壁の黒塗り度合いは減っていき、反比例するように異常性が上がってゆく。
入り口付近の壁には黒塗りの壁に水着の女や海外のポルノグラビア、まだこれなら良い。
だが奥の壁にはグラビアから顔だけ抉り、代わりに一階にあった死体の写真から切り取ったであろう顔を貼り付けてある。
ポジティブな考えは全て消え失せた。
こんな事をしたのがこの家の主だろうが廃屋に移り住んだホームレスだろうがどうでもいい、
みんなこの光景に言葉を失ってはいるが目を見ればわかる、満場一致で「今すぐ出よう」だ。
きびすを返し元の窓に戻ろうとしたとき、友達が言った。
「・・・・・・人がいる」その場で全員が、友達が指差す方を見る。
廊下から部屋に続くすりガラスの向こう側、そこに懐中電灯を全員が一斉に当てた。
女がいる、下着姿の、それも一人ではなく、大勢。
全員声も出さず、呼吸もぜず、ただ固まったままライトを当てている。
どれだけ時間がたっただろう、誰かが言った。

「・・・・マネキン?」俺も口を開く、「・・・・かな・・・たぶん」
ゆっくりすりガラスをあけると「彼女たち」は確かにいた。
「・・・・・・マネキンかよぉ・・・・・勘弁してくれよ!」
部屋の中を見渡すとマネキンが林のように並んでいる、広いへやに二十体ほど。
「気色わりぃ・・・」
みんな口々に同じような事を言っている、でも気色悪いのはマネキンの存在でも
その多すぎる数でもなく、マネキンのその姿だ。下着は下着でも機能的なものじゃない、小学生の俺達も知っている、
公園で拾う本の後ろ側に載っている、男を誘うためにあるような・・・そんな下着。

この家に住んでいた者の中身を垣間見た気がしてゾッとしていると、
「住んでた奴は絶対お前みたいな変態だな!」そう言って俺の顔を友達が指差す。
みんながその言葉で大笑いし、すこしだけ緊張がほぐれた。
「もう少しだけ見たら帰ろう」一人がそう言うと皆が頷いた。
部屋に入るとマネキン以外にもいくつかの物があった。壊れたテレビ、玩具、オーディオ、よくわからないガラクタ、そして本の山。
俺は本の山から一冊を取り出し開いてみると、「・・・やっぱりこれもかぁ」思わず声が出た。理由はここまで読んでくれた人ならわかると思う。
「これも顔や体がすりかえられてる・・・・」そう言いながら友達の方へ顔を向けると
友達が何かをいじっている、よく見ると車のバッテリーだった。
「感電するから止めとけって!」俺がそう注意すると一瞬動揺しつつ、
「大丈夫!」と何の根拠も無さそうな返事で活動再開。
溜息混じりに何となくほかの本を手に取ったとき、

俺の心臓は凍りついた

ブツン!

ブラウン管のテレビが点くときになるあの独特の音。その目の前で、
「点いた!俺って天才!」と無邪気に喜ぶ友達。
周りの友達の顔が凍りつき、当たり前の疑問をなげかける。
「何でテレビが点くんだよ・・・・」
でも俺の心臓が凍りついた理由はテレビじゃない。俺は渇ききった口を開いた。
「この雑誌、今月号だ・・・・・」
俺の言葉でテレビの前ではしゃいでいた友達も状況がわかったらしく顔が凍りついた。

ギシッ・・・・・

微かに音がする。

壊れかけ、灰色の映像で映しだされる歪んだ顔のニュースキャスター、
ノイズ交じりの声が響き渡り懐中電灯とテレビの光で照らされた部屋の奥
マネキンの林の中に、

確かにそれはいた。
人以外にはできない最高の喜びの表現、笑顔。
それが人だとわかり、その場にいた全員の喉の奥から悲鳴が上がったときには
そいつはマネキンを掻き分け向かってきた。他の者には目もくれず、一直線に、俺の方へ。
その場にいた全員が声を張り上げ我先に逃げてゆく。俺はと言うと、対峙していた、真正面から。

俺の前にいるのは人間だ、間違いなく、人間の男だ。頭で必死に理解しようとする。
幽霊じゃだめだけと、人間なら話し合えるかもしれない。
・・・・・・・・わかってる、わかってるんだ、逃げるべきだって事は。
早く逃げろよと今ならそう思えるけれど、あの時は恐怖でどうかしてたんだ・・・。

「・・・・・・・・・・こんにちは」と俺。

「可愛いねぇぇぇぇ」

・・・・・・・褒めてくれた?
「君は好き?こういうやつ好き?」男が手に持った分厚い本を開いて見せてくる。
下の階にあった人体標本がのった本だった・・・

死体の写真の顔が外人の女に差し替えられていた。
「こういうのはあまり好きじゃない・・・・」
「好き?ねえ好き?どういうのが好き?いrw里いvmrvbmんr9ぢc炉vmvおvりc、
ぐぃうghbのtgんろgbんをんbを意を得rggrkwvm9wmv95pgとpgkm地fm儀gtgんgjtbmrtkbmrwbm4尾5印brウィ音日btmkgんびgんれおbmkんbvkfんぼrぎおtんrbr3gtvm9v9v9v、jcj4j、@」
駄目だ、人の言葉さえ喋ってくれなくなった。俺もう終わりかも・・・・・

「おいっ!」

  
横を見ると友達二人が泣きながら俺を呼んでいて、
次の瞬間には跳ねるように友達の方へ走ってる自分がいたんだ。

足がもげるんじゃないかと思うくらい全力で廊下を駆け抜けたよ。
一切後ろを振り返らず窓から転げるように飛び出るとほかの友達がビール瓶やトンカチ、
自分たちが持ち寄った武器を手にとって、まっててくれた。全員揃った所で屋根から飛び降り始めると、
その時うしろから

「好き?」

その言葉を聞いた瞬間、全身に鳥肌が立って思わず振り向いたんだ。
窓から覗く男の顔には人体標本のページを切り抜いて作ったであろうお面が張り付いていた。
あとはもう屋根から下も見ず飛び降りたよ。

294 本当にあった怖い名無し sage 2013/10/14(月) 12:51:39.53 ID:SHSKxkAB0
友達の家へ駆け込んで今日の出来事を話したら、友達の母親が警察に連絡してくれたよ。
だだ、警察が覗きに行った時には誰もいなかったらしく、家である程度話を聞いてもらって
後日警察でも同じような感じで話をしたんだ。
でもその後が問題で、中にいた男が見つかる事はなく、3ヶ月位たって友達からあの家が取り壊されて空き地になってると聞いた。
一度勇気を出して行ってみたんだけれど、本当になにも無くなってたよ。
いまでも「廃屋」って言葉を聴くだけで震えが来る、これで話はお仕舞い。

長々と失礼しました。
最初に自分にトラウマがあることを説明したと思うんですが、
この体験談を書いてる最中、小学生の時の友人達に連絡を取ったんです。
あの人が誰だったのか友人に聞く事ができました。
同じ学校に通っていた同級生の叔父さんだったらしいです。
友人もすべては話して貰えなかったらしく曖昧な所も多かったですが、
このスレで体験談を書き始めたことで自分の中のトラウマが少し消えた気がします。
読んでくれた皆さん、本当にありがとう御座いました。

302 本当にあった怖い名無し sage 2013/10/14(月) 13:51:08.21 ID:SHSKxkAB0

298
不法侵入は否定しませんが、あのおじさんの家でもなかった様で。
聞いた所、予想は当たってたみたいで元々は家の近所の病院に勤める先生の物だったそうです。
先生が体を壊され親族の所に移った後、誰も住まなくなった家をあのおじさんが好き放題にやっていたらしいです。
元々その事で過去に逮捕歴があったらしく、捕まったはいいが不法侵入では長い刑は言い渡されなかったらしい。
そのあと家に戻ってきたらしく、「俺をはめたのは誰だ!」と近所の人に食って掛かってきたらしいんですが、
時間が経つにつれて言動、行動が幼児化?してしまい危害を加えることもないので見てみぬふりをされていたらしいです。

305 本当にあった怖い名無し sage 2013/10/14(月) 14:39:43.70 ID:wsh4dTGtO

302
家族が監禁したのかと思ったが、じゃあ誰が工事したの?

二階への階段は取り外され、階段が本来通るはずの場所は鉄板で塞がれていた。

306 本当にあった怖い名無し sage 2013/10/14(月) 15:01:03.02 ID:SHSKxkAB0

305
自分の説明が足りなかったようで。
家の持ち主とそのおじさんは一切関係ありません。
誰もいなくなり廃墟になったあの家におじさんが勝手に住み着きそれが原因で過去に逮捕されたようです。
階段の件ですが、おじさんが勝手に廃墟(というか先生の実家)を荒らし好き放題に改造していたらしいです。
あのおじさんは太陽が嫌いらしく明るい内は出てこないそう。ちなみにおじさんの本当の家(俺の同級生の家)はすぐ近所にあるらしく
何度か厄介払いの為に遠く(病院?親戚?)へ連れて行かれたらしいんです。でもどんなに精神的におかしくなっても
なぜか遠くから戻って(逃げて)くるそうです。

ざわつき声

10 1/5 sage New! 2013/11/02(土) 20:51:05.00 ID:W3ujJ8R60

こっちでいいのかな?

高校を卒業し、進学して一人暮らしを始めたばかりの頃の話。
ある夜部屋で1人ゲームをしていると、下の方から大勢の人がザワザワと騒ぐような声が聞こえてきた。
俺は「下の階の人のところに客が一杯来ているのかな?」とも思ったが、耳を澄まして良く聞いてみると、
声の感じから数人という事はなさそうだ、もっと大勢の人の声のように聞こえる。
気のせいかもしれないが、まるで大きな駅とかなどの雑踏のざわつきのような感じだ。
その時は「そういう映画かテレビ番組でも見ているのかな?」と考えながら、それ以上気にせずにいた。
が、寝る頃になっても一向に「ざわつき声」がなくなることは無く、そこまで大きな音では無いのだが
深夜3時頃まで聞こえていたせいで、結局気になってその日は殆ど寝る事ができなかった。

それから数日間、毎日ではないが夜10時頃から深夜3時頃まで、頻繁に「ざわつき声」が聞こえてくるので
俺はろくに眠る事ができず、いい加減苦情を言おうと階下の人のところへ行く事にした。
呼び鈴を押して暫らくすると住人が出てきた、歳は俺より2つか3つ上くらいだろうか、見た感じ学生っぽく
見える。俺が上の階の住人である事を話し苦情を言おうとすると、その人はいきなり不機嫌になり
「あんた毎日毎日真夜中に何やってんだ、煩くて仕方が無いんだが」と逆に言われてしまった。

(ややこしくなるので、ここからは下の階の人を仮にサトウさんとしておきます)

意味が解らない俺は、事情を最初から話して下のほうから殆ど毎日のように大勢の人のざわつき声の
ようなものが聞こえてくると話すと、サトウさんは「ざわつき声」が夜になると“上から”聞こえてきて、そろそろ
大家か不動産屋に苦情を言おうと思っていたと話し出した。
その話を聞いて、俺は理由は良く解らないが何かいやな感じがしてきた。
あれは明らかに人の声だ、何度も聞いているから聞き間違いは無い、それにサトウさんも「大勢の人の
ざわめき」である事は間違いないという。
暫らくの沈黙の後「…天井裏に何かあるのかな?」とサトウさんが言ってきた。

「天井裏行ってみる?」サトウさんがそう切り出してきて、俺の返事も待たずに懐中電灯を持ち出してきた。
が、俺は勝手に解決しようとして万が一にも天井踏み抜いたり、そうでなくとも何か壊してしまったら後々色々
問題になるかもしれない、ここは管理している不動産屋に事情を話して来てもらったほうが良いんじゃないかと
提案し、行く気満々のサトウさんを説得した。
そして俺は「ざわつき声がする」と言うと不信に思われるので、その辺りははぐらかし「床下から何か異音がする」
と不動産屋に白々しく電話を入れた。
すると不動産屋はどうやら天井裏にネズミか何かが入り込んだと思ったのだろうか、数日以内に業者を連れて
そちらに向かうと言ってきた。
俺はなにか結果的に騙しているような感じになってしまってちょっと引け目を感じたが、その事をサトウ
さんに話すと「まあ、異音がするのは事実だしとにかく来てもらおうよ」という事で、特に問題ないだろうとの
事だった。

当日、結構早い時間にサトウさんが俺の部屋にやってきた、不動産屋と約束した時間にはまだかなり
余裕がある。
彼が言うには、どうも急な用事が入ってしまって今日は立ち会えないとの事で、不動産屋が来たら問題ない
から合鍵で勝手に部屋に入ってしまってかまわないと伝えてほしいとの事だった。
「そんな事自分で電話しろよ…」俺はそう思ったが、まあ仕方が無いので了解し、不動産屋との待ち合わせ
の時間まで待機する事にした。

昼少し前くらいに不動産屋が駆除業者と一緒にやってきた。
不動産屋がサトウさんと連絡が取れないが何か聞いていないかと言うので、今日の早朝にあったことを話すと、
少し困った顔をしたが一応サトウさんの部屋へ行く事にした。
話を聞くと、1階と2階の間を調べるにはサトウさんの部屋のバスルームの天井から入るしか無いらしい。
サトウさんの部屋に行くと、合鍵で開けてほしいとの事だったが、なぜか部屋のカギは開いていた。
流石に俺が入るのは問題があると思うので、業者と不動産屋に任せて外で待っていると、突然中から
「うわ!大丈夫ですか!?」という声が聞こえてきた、何事かと玄関のドアを開けてみると、不動産屋と業者が
真っ青な顔をして出てきて「警察に電話を…」と言ってきた。

その間色々あったのだが長くなるので結論から書くと、サトウさんがバスルームで死んでいたらしい。
それから色々大変だった。
パトカーや救急車がやってきて大騒ぎになり、俺も警察から色々と事情を聞かれた。
朝にサトウさんと話したときは、不信な様子は少なくとも俺の見た感じでは一切なかった事をはなし、一応
天井裏の事を警察に話すとそれも含めて調べていたようだが、何か見付かったのかとかそういう事はなにも
教えてもらえなかった、結局俺としては天井裏の「ざわめき声」も含め、サトウさんの死因も何もかもあやふや
なままになってしまった。

その日の夜。
色々ありすぎたので疲れてしまい、さっさと寝てしまおうと早めに布団に入ると、「例のざわめき声」がいきなり
聞こえてきた。
が、何かがいつもと様子が違う、良く解らないが違和感を感じる…
暫らくして違和感が何なのかに気がついた、今までは下から聞こえてきていた声が、明らかに横から聞こえる。
しかも今までは床越しに聞いていたので多少くぐもって聞こえていたのだが、今回はまるで「同じ部屋の中」から
聞こえてくるように鮮明だ、そう考えたとたんに急に背筋が寒くなってきた。
目を開けて声のほうを見てみたい気持ちもあるがぶっちゃけ怖い。
そうは言ってもやはり声の正体は気になる、俺は意を決してベッドから起き上がり、声のする方向を見た。
そしてとんでもないものをみた。

そこにはスーツ姿の男が1人立っていた。
ただ、厳密には「立っていた」というのとは少し状態が違う。
まるで水面から上半身だけを出しているかのように、床から人の上半身が生えているような状態だ、それだけ
でもかなり異様な状況なのだが、そのスーツ姿の男は眼球を上下左右に激しく動かし、口もまるで早口言葉
を喋っているかのように激しく動いている。
そして、その口から例の大勢の人のざわめき声が聞こえてきていた。
俺はあまりの事に体が動かせず、訳も解らずそのスーツ姿の男を凝視していると、暗がりに目が慣れてきて
もう一つ異様なものをみつけた。

サトウさんだ。
サトウさんが床から顔だけを出し、めいっぱい目を見開いて天井を見つめ、まるで魚のようにゆっくりと口を
パクパクさせている。それをみた時、なぜか直感的に「あれは何かとてつもなくヤバイものだ」と感じた。
俺は完全に思考が停止してしまい、わけも解らないまま着の身着のままで携帯と財布だけを持って部屋から
逃げ出した。
その夜はひとまずマンガ喫茶で夜を明かすと、朝一番で不動産屋へと向かった。
あんな場所にはもう住んでいられないので、引越し手続きをするためだ。

不動産屋につくと、担当の人を出してもらいすぐに引越しの話を切り出したのだが、突然の事にしても
やけに担当の人の様子がおかしい、なぜかどうしても引越しをさせたくないように見える。
不信に思ってしつこく追求してみると、どうも俺はサトウさんの死に関係があるのではと疑われて
いるらしい、だから安易な引越しはさせれないようだった。
言われてみれば当たり前の事だ。
サトウさんと最後に会っていたのは俺だし何より「騒音トラブル」もあった、朝の出来事も俺がそう言っている
だけで客観的な証明など何一つない、何よりサトウさんの死因はまだ不明のままだ、俺が殺したと
疑われても仕方が無い状況だ。
そこに来ていきなり俺が引越しをしたいと言って来れば、不動産屋としても当然疑うだろうし、当然不動産屋だ
けではなく警察も疑っているだろう。

かと言って、あの部屋に戻るのだけは絶対にいやだ、あんな得体の知れない不気味な物が現れた場所で
また過ごすなどありえない。
そもそもあのスーツ姿の男がサトウさんの死に何らかの形で関わっているのは明白だ、もしかしたら次の
ターゲットは自分かもしれない。
そんな事情が事情だけに、俺としても絶対あの場所に戻るのはいやだ、そこで信じてもらえるかどうかは解らないが、
今までの経緯や昨晩の事を正直に不動産屋に話した。すると、不動産屋はこの話を信じたのかどうなのか
解らなかったが、とりあえず自分の裁量ではどうにも判断できないので、警察と相談してほしいと言って来た。

仕方が無く、俺は昨日警察から貰った名刺の番号に電話をして、警察署で事情を話すことにした。
警察署につき、担当の人に不動産屋で話したことと同じ事を話したのだが、当たり前といえば当たり前
だが当然話は信じてもらえなかった。むしろ「こいつは何を言っているんだ」みたいな態度を取られ、連日の
寝不足の事もありイライラしていた俺は、発作的に「だったらてめーもあそこで一晩いてみろよ!」と、
大声で怒鳴って担当の警察官に自分の部屋のカギを投げつけた。
後から考えれば、理不尽で無茶な要求をしていたのは俺のほうなのだが、警官は俺を落ち着かせると、
引越し先はあまり遠くにしない事と、引越し先の住所を報告し警察からの電話には必ず出る事を約束すると、
引越しを許可してくれた。

その後俺はなんとか別の場所に引っ越す事が出来、事件の方はどうやらサトウさんの自殺のようだという
事も解り、俺への疑いもなんとか晴れた。
自殺である事が判明してから暫らくして、俺はまた警察に呼ばれた。
どうもサトウさんのPCから日記が見つかっていたのだが、そこに書かれている内容の一部に俺が警察で
話した例のスーツ姿の男と酷似した人物のことが書かれていたそうで、その辺りの事情をもう一度詳しく聞きたい
ということだった。

結局あのスーツ姿の男の正体は今でも不明のままだが、警察から聞いた話でいくつかわかったこともある。
日記の内容から、どうも俺が最初にサトウさんの所へ苦情に行った時点より前に彼は「スーツ姿の男」に
出会っており、「ざわつき声」の正体がその男である事も知っていたようだった。
そして、日記にはスーツ姿の男が明らかに悪意のある相手である事が繰り返し書かれていて、サトウさんは
身の危険を感じていたらしい。
なぜそこまでわかっていたにも関わらず、彼はあんなさも何も知らないかのような態度を取ったのだろうか、
警察は何も言っていなかったが、もしかしたら天井裏には何かがあったのではないだろうか。サトウさんは
そこまで知っていて、何らかの理由で俺を巻き込もうとしていたのではないだろうか、今となっては何も解らない。

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