Bさんは兵庫県の海沿いの町に引越してきた。季 節は夏だった。
日曜日の早朝、釣り竿を持って自宅近くの海岸ま で出掛けた。 辺りはまだ薄暗かった。 海岸へ着くと先客がいた。 眼鏡をかけた50歳ぐらいの男性が、釣り竿を砂 浜に差して当たりを待っていた。
221 :ダメレオン ◆aKQ2SJ2lbM :2012/08/19(日) 02:59:08.58 ID:q4k6unsD0
第六十六話【穴】1/2
Bさんは兵庫県の海沿いの町に引越してきた。季 節は夏だった。
日曜日の早朝、釣り竿を持って自宅近くの海岸ま で出掛けた。 辺りはまだ薄暗かった。 海岸へ着くと先客がいた。 眼鏡をかけた50歳ぐらいの男性が、釣り竿を砂 浜に差して当たりを待っていた。
Bさんもルアーを投げ込み、釣り竿を砂浜に差し て当たり待った。
「この海はよく釣れますか?」 Bさんのほうから男性に声をかけた。
「ええ、けっこう釣れますよ」 男性が愛想よく答えた。
「でもね、この場所、どきどき高波が来るから注 意せなアカンよ」 続けて男性がこう言ってきた。
222 :ダメレオン ◆aKQ2SJ2lbM :2012/08/19(日) 03:02:59.40 ID:EQ8fsQVD0
第六十六話【穴】2/2
「そうなんだ、ぜんぜんそんな場所には見えませ んけど」 穏やかな波を見ながらBさんが言うと
「まあ、滅多に高波なんか来ないんやけど、そん で油断してたら去年、ワタシ高波に呑まれました んや」
えッ!Bさんが男性のほうを向くと、そこには誰 もいなかった。 男性が立っていた場所まで近寄ってみると、そこ には釣り竿を差した穴だけが残っていた。 その穴も波にさらわれて、すぐに消えてしまったという。
出典: ・【8月18日】百物語本スレ【怪宴】